中里伸也展「New Photographs」

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中里伸也の写真は写真といっても、絵画や彫刻に近いものに感じられる。
被写体は完全に自分でつくる創造物である。
壁に描き、床をつくり、生クリームを泡立て、配置し、そして全体の構図をつくっていく。それは果てしなく無為の行為に等しくも感じられる。しかし、四角い写真に切り取っていくと、俄然イキイキとした作品に生まれ変わる。
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シーツに何度も生クリームを塗っていくという少し暗い作品は、セザンヌの絵画によく見られるテーブルクロスに准えている。それは姿を変えてはいるが、近代の絵画の歴史を強く意識している。孤高で妥協を許さない作家の姿であるともいえよう。
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この作品は、もっと大きい作品でも耐えられると思うが、太い筆でぐんぐん描いていくようなイメージも見受けられる。デ・クーニングを意識している作品は、色彩が随所におかれ、筆跡も感じられるようにも見えてくる。この作品はガラスや身の回りにあるような瓶や日常のものを配置してつくられていると聞くが。
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小品は、少しこれらの作品と趣が違うようだが、床やテーブルの上に置かれたいろいろなモノたちがつくる世界がある。ソフトフォーカスなイメージで中里が作り出す不思議な、そしてチャーミングな佇まいは魅惑的だ。
明るいが芯と冴えた作品たちは、中里の世界を醸し出しているといえよう。