中里伸也の写真

中里の写真は純然たる写真である。しかしながら、写真と呼ぶのにためらいを憶えるのは私だけであろうか。

壁に描くペインティング、その前にあるオブジェクトしかり、机に並べられたリンゴや洋梨、それを中里の手でペイントされたり配置を決められたり。そしてそれを写真に撮る。画家が絵を描く手順と、とても似ている。

今回の展覧会の小サイズの作品は、完成を見たかと思う作品の部分を、更に大きく引き延ばされている。もう、構図や絵のディテールに拘ってはいない。しかし、拘ってはいない、というディテールが更にはっきり見えてくる、という効果もあるように思う。

大きい作品はのびのびと明るい。壁に描かれた線が、又コラージュした面が、前景におかれたオブジェと呼応して効果をあげている。初期に作っていたアジェの写真が求心的であるのと比べて、外へ広がっていく傾向がある。これからの中里の作品がスケール感を持っていく方向にいくようで楽しみなことである。

中里伸也展『He said, ” these things themselves don’t matter at all.”』

2011年9月10日(土)〜10月2日(日)
月・火曜日休廊
11:00〜19:00(日曜日は17:00まで)