「発 見2」

「発 見2」
伊藤誠×多田正美の「発 見1」の会期中トークと、サウンド・エンカウンターがあったのだが、このことは後に回して「2」を先に書くことに。
「発見2」は先の「1」とは内容もコンセプトも大きく異なっている。
「1」の場合は年齢も近いし、今までにも何度かコラボレーションをしているので、話し合いが少なくても、ある程度は予測ができたのである。
それに較べると3人の作家、味岡伸太郎、島州一、松下誠子には接点がない。
島州一、味岡伸太郎は年齢はちがうけれど、双ギャラリーの初期の頃からの作家である。
島州一は双ギャラリーの個展では最初の作家であり、1986年3月が初個展である。そしてその年、6月が味岡であった。
版が主体の作家の島が、平面を模索し始めた時期にもあたっている。翌87年は「アナログとデジタルの変換」として机をトレースし、切り刻んで再度トレースをしながら作品に変換していく。というところから、次々新しい技法が生まれ、今はトレーシングシャツというコンセプトで浅間山を描いている。
味岡は立体の作品から出発するが、最初の作品の写真を見たときに書のイメージが浮かんだのを今も鮮やかに覚えている。何故、立体の作品から書を連想するのか。それは味岡にとり書が原点であり、それが色々の技法に波及するが、原点回帰とでも言おうか、何時も書に立ち戻ってくる。
松下はここ10年位双ギャラリーで関わっている作家である。彼女もオブジェと絵画の間をいきつ戻りつしながら自分の表現を模索している。女性性とも言うのか、情念の作家と言おうか。しかし、情念を突き詰めていくと軽やかで、爽やかにさえなってくる。そんな不思議な作家である。
この三人を一つの部屋にと考えると、無理だと言われそうだ。確かに初めに頭に閃いた時、どう接点を持てば良いのか解らなかった。
島は、今制作中の作品「カフカの部屋」のシリーズがある。島は殆ど全部がシリーズで作品を作っている。トレーシングシャツもシリーズで長く続いているのである。シリーズ以外の作品で「カフカの部屋」は珍しい。

味岡には7m以上ある壁に、味岡の原点、書をお願いした。俳句で「是空」という言葉が入る7mの書を見事に描き切っている。

松下は、個展も終わって間もないのに、ピローケース、枕を、ギブスで型取り、枕の口のところから鳥の嘴が覘き、そして床をチョコチョコ張って動いているようにもみえる。不気味な形相をしていながら、少なからず滑稽味がある。

三人三様、自分のことを一生懸命するだけである。
カフカの虫に、ほとばしる是空の字の跡に、床に点在する鳥の頭に、それらは勝手に広がっていく。けれども三人の作品は不思議と繋がってみえてくる。あたかも、光が散らばって行くように。