コレクションの中から、白と黒の作品を探してみる。
あれこれ、コレクションからセレクトするのは楽しいのだが、モノトーンの作品が多い事に気づかされる。いろいろなギャラリーを訪ねてみると、資質や真価とも言えるものが、コレクションの中に見いだせるような気がする。
実際にコレクションで展覧会をするのは、少し怖いが、でも楽しい行為でもある。
企画展をする時は、なるべく好きであるというのを避けて、自分の心に響く作品、そして、抵抗感のある作品を選んできた。それと今に迎合する作品を避けてきたようだ。
今回選んだのは、古い作品が多い。
写真はアジェ、そして、マン・レイ。
古い話であるが、アジェの写真集をみてすっかり虜になり、その頃出ていた写真集をほぼ買って飽きずに眺めていた。私にとり、アジェは写真の原点に位置する。
ラッキーな事にツアイトフォトの石原さんに出会い、写真集の中から好きなのを選んだら、ガスマンに頼んでプリントしてあげると言われて買ったものである。2、3年、時間が掛かったのだが。
マン・レイも同じような経緯である。トリスタン・ツァラの写真は、何年かかったのだろう。
その頃、ピエール・ガスマンはまだ存命中で、アジェとマン・レイはガスマンがプリントをする権利を持っていた。写真の裏面にはガスマンのサインとエディションナンバーが入っている。
ぐっと新しい写真が森村泰昌である。といっても森村の中では1996年の作品だから旧作と言えるのだが。双ギャラリーでポートフォリオのシリーズとして作っていた「手」の中に入る、ダ・ヴィンチのモナ・リザとボッティチェリの作品である。
写真からは随分遠い作品だが、菅木志雄と李禹煥の作品を出品した。
菅は双ギャラリーでは10年間、個展、グループ展をした作家である。作品は沢山あり、コレクションをするには、難しい作家である。
菅が双ギャラリーを離れるとき、実験的で、売れる事を念頭に置かなかったので、自分の中では一番良い作品だったと、言われた。それは兎も角も、今出しても新鮮な感覚を呼び覚ます作品である。「住居の要素」は双ギャラリーでやった平面展の中のものである。65枚も作ったのであるが、充実感があり菅の才能が迸るような作品である。
最後に李禹煥の作品である。今年はニューヨークのグッゲンハイム美術館の個展があり、ヴェネツィアビエンナーレの関連企画にも出展されると聞く。
李禹煥の作品には、双ギャラリーは多くを助けられてきたようだ。お金のない双ギャラリーにも、李さんの作品を好きなコレクターの方がいられて随分買って頂いた。
Correspondenceは白地のキャンバスにグレーの点が一つ。この凝縮した点を、広い大地に置かれることにより、動き出した白い地平は無限に広がる。そんなことを連想させる、静謐な、それでいてエネルギーのある作品である。
「白と黒展」
2011年3月5日(土)〜4月3日(日)
月・火曜日休廊 11:00〜19:00(日曜日は17:00まで)
SOH GALLERY K3にて