出店久夫展「写真画考」

出店久夫の「写真画考」と名付けた展覧会である。

写真画という新しいジャンルを切り開いたと言おうか、絵画という、古くからある美術の世界に新風を吹き込んだというと、少し大げさであるが、私はそう思っている。
写真画には、まず不思議な世界が広がる。東日本地震の被災の様子を窺わせるタイムリーとも言われる表現は、実はもう30年近くも続けているテーマである。
そこには暗く厳しい世界が広がり、思わず眼を背けたいと思う程だがしばらく見ていると、不思議な安らぎとも言えるものが感じられる。それは未来に向けてのメッセージともいう再生のイメージが強くある。出店がよくつかう子供や招き猫、アルマジロ、サイ等々が緊張した風景を和らげてみせる。


これらの世界は、出店によって気の遠くなるようなプロセスで完成される。
現代は簡単にデジタルの技法で作れるのを、敢えて、細かい、実に細かな手作業で作品にしていくのには、意味があるのか。海の景色の複雑に絡み合う世界のなかにお手本があるようにも思えてくる。

でもそれを書くのには長い文章が必要になってくる。この場ではこれくらいにして、写真画をゆっくりながめて考えていただきたいものである。

出店久夫展「写真画考」

2011年6月3日(金)〜26日(日)
月・火曜日休廊
11:00〜19:00(日曜日は17:00まで)
SOH GALLERY K3