西江雅之の写真—地球は我が家

展示期間:  2020年2月28日~2020年3月15日

双ギャラリーでは2月28日(金)より、「西江雅之の写真—地球は我が家」を行うこととなりましたので、ご案内いたします。
文化人類学・言語学者として世界を旅した西江雅之(1937〜2015)は、双ギャラリーが1985年にオープンした当時からのお付き合いがあり、ギャラリーに携わる様々な人々に多大な影響を与えた人物です。
専門の文化人類学、言語学のみならず、実に多彩な知識と圧倒的な語彙、まるでパフォーマンスのような西江の話に時を忘れて引き込まれたのが思い出されます。

西江は学者としての活動の傍ら、数多くの美しい写真を遺しました。双ギャラリーでは2011年に写真展を行っています。没後5年を迎え、今尚色褪せない西江の世界をご紹介いたします。
今回の写真展では、その長い旅路の中で西江が出会った景色を感じさせる、もっとも印象的な作品を選びました。
西江雅之の旅の足跡は、20代のはじめ、早稲田大学在学中に参加した「アフリカ大陸縦断隊」にさかのぼります。現在のモザンビークから南アフリカ、タンザニア、ケニアなどを経て、「悪霊も逃げ出す土地」といわれたソマリアを単独で縦断。さらに、ジブチからエチオピアへと足をのばし、海を越えてアラビア半島にわたり、イエメンのアデンへ。アデンやソマリアでの旅は、10代半ばの西江がとりつかれるようにして読んだというフランスの詩人ランボーが詩を捨てた後に暮らした世界とも重なって、とりわけ強い印象を残したようです。
人生を変えたアフリカとの出会い。その後、半世紀あまりにわたって、ピジン・クレオール諸語(異言語接触により形成されることがあり得る新しい言語)の日本における先駆的研究者として知られた西江が滞在した土地は、アフリカ大陸、インド洋、カリブ海域、南米、オセアニアなど、各地に広がっています。人間がつちかってきた伝統的な暮らしが、かつてないほど急激に変化した時代。図らずも、その目撃者となった西江の眼がとらえた、かけがえのない一瞬を感じていただければ幸いです。

尚、今回のプリントはアーティストの多田正美が行いました。多田は西江と長い親交があり、その人間性に魅せられてきました。彼の技術と配慮によって、もとのフィルムの味わいをいかした素晴らしい写真が生まれています。

西江 雅之(にしえ・まさゆき)
1937年、東京生まれ。文化人類学・言語学者。早稲田大学政治経済学部卒、同文学部大学院芸術学修士課程修了。フルブライト奨学生としてカリフォルニア大学大学院で学ぶ。東京外国語大学、早稲田大学、東京藝術大学などで教鞭をとった。世界各地で土地の人びととの交流を重ね、言語と文化の研究に従事。生活と研究の両面で独創的な態度をつらぬき、飾り気のないその人柄から「裸足の学者」と呼ばれる。現代芸術関係での活動も多いほか、美しいエッセイの書き手としても知られ、多くの高等学校国語教科書に作品が採用されている。2015年6月、77歳でその生涯を閉じる。
著書:『花のある遠景』『異郷の景色』『旅人からの便り』『ヒトかサルかと問われても』(半生記)『アフリカのことば』『ことばの課外授業』『マチョ・イネのアフリカ日記』『伝説のアメリカン・ヒーロー』『異郷日記』『食べる』など。写真集に『花のある遠景』『顔!』がある。

NISHIE Masayuki