双ギャラリー20周年展について

双ギャラリーは2005年12月に20周年を迎えました。
1985年から2005年までの20年を、中心から外れた郊外にいて、少し異なる考えで続けてきた小さな画廊のこだわりがこの連続展に結びついたのではないかと思っています。
高々20年ですが、アートのみならず世界的にみても大きな変換期を迎えた20年ともいえそうです。国内を、そしてアートだけを限定して考えてみますと、現代美術と声高に唱えられた80年代を通過しながら、90年代は過熱したバブルは崩壊し21世紀の現在に繋がってきています。しかし、アートは社会の趨勢の一部分でしかなく、社会変換ヘと向かう大きな胎動期の20年だったとも思われます。
世紀末である90年代はIT革命とも言われ、我々の生活はコンピューターに依存したものへと移行し、今も更に進化し続けています。戦争も国対国ではなくテロとの戦い、見えない敵ともいう、嘗て人間の生きてきた歴史上にもなかった新しい戦いが始まり、それは固有なものへの憎しみではなく親しい人も明日は敵になるかもしれない、人間不振の戦争ともいえます。
そんな予兆は80年代にはすでに内包されていたのではないかと思います。その時、その地点にいて、我々には中々現状を見据えることは出来ないようです。アートという媒体を通して少しは先を、そして今置かれた地点を見たい、そんな思いがアートへの情熱にと駆り立てていったのではと、今になるとそう思えてきます。
1985年のオープンはその名も「現代美術と共に」と60年代を現代美術の出発とみて、60年代から1985年までを俯瞰する展覧会をしました。
一周年展では「サウンドインスタレーション70年代/環境/即興/音楽/その無名声の展開」、「李禹煥、関根伸夫、菅木志雄の70年代の方法」と連続展でサウンドと美術の70年代を手繰り寄せました。
ここまでは近過去を辿り、二周年展では現時点の若い作家、それも一番刺激的で活きの良い作家はと考え、直島の美術館長?にまでなる秋元雄史、そして柳幸典の二人展をしました。その後は、時代と共に、作家と共に、と言う考え保持しながら今現在に至っています。
しかし、小さな画廊の小さな展覧会、作家たちとの密な関わり、それも時代と共に変わってきたのも確かです。
この連続展では、写真、絵画、彫刻、版画という4種の技法の作品を通して、濃密でもあった20年という時間を今一度考えてみたいという思いもありました。小さな原点のようなものを見直し、過去に目を向けながら、未来を眺望したい必然を感じています。アートは何故あるのか。アートの必然とは。
それは人間と共にある絶対のものと私は信じています。アートを通して社会が見え、人間の本質が透けて見えてくるようです。
「モノクローム推考」で写真という技法を使う作家、柴田敏雄、多田正美、森村泰昌、森山大道の4人のモノクロ写真からなる展覧会ですが、柴田、多田は初めての試みの写真を展示致しました。
「絵画考」は絵画を再考する意味で、70年代から2005年迄の作品を同じ場に展示致しました。時代の変遷よりも作品の絶対性によりウエイトをおいた考えに拠っています。
作家は島州一、菅木志雄、吉澤美香、李禹煥の4作家です。
「オブジェクト」には多様な技法、多様なコンセプトの作家たちの作品を出品しますが、作家紹介をしていけば、時代の変遷とも繋がっていきます。新作、旧作共にユニークな展示となりました。
出品作家:味岡伸太郎/菅木志雄/伊藤誠/岡崎乾二郎/山田恵子/ロサ・ロッサ/李允馥
「版の領域」は現代美術の出発点と称される関根伸夫の「位相大地」を一周年展に双ギャラリーで制作しましたが、残せないものを技法を変えて残していく。同じコンセプトのドイツの作家パレルモは、ギャラリーにテーピングしただけのインスタレーションを版画化した作品などと、版画の領域に迫っていく展覧会です。他に双ギャラリー刊行の吉澤美香の大、中、小の膨大な版画、サイ・トゥオンブリーの版画等も出品致しました。