多田正美展「音は痛みー写真は物語」

展示期間: 2016年4月8日~5月1日

今回は、東日本大震災以前に多田が撮影した沈む太陽の写真に、透明メディウムを施す事で新たに構成した作品として発表いたします。
多田は、震災前と今では、日没の太陽の色が変わってしまったと言います。
赤い太陽が富士山に衝突する、と錯覚を起こすほど見事な沈む夕日。
太陽が静かに沈む数分間をカメラに収めています。短い、峻烈なドラマを、一枚も捨てるのはなかったと、作家は全てを現像しました。生と死の間のような太陽の姿を。
何時もするように、小さなヒトガタの入った写真に透明メディウムを施し、1つのイメージを1つの展覧会で問うてみたいとは、作家の言です。

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音は痛み…。写真は物語という副題が付いている。「音は痛み」とは、何時も多田の音を作る時、必ず使う枝を降る(空気の存在を知る行為)。
20年前くらいに前に始めたと思うが、観るわれわれは楽しくていつの間にか笑顔が溢れていたが、多田は倒れる寸前だったことがあった。竹を300本も身体に巻きつけ激しく動く、40kgもある重い石を持ち上げ、投げる行為etc.。
音に向かって純度を高める行為には、何時も多田は痛みを感じているのではないか。今回のオープニングのライブは終わったが、われわれは、多田の音の行為の中に痛みを見つけただろうか。否、われわれは純粋に音を聴き、素直に純度の高い音に感応しただけである。

写真は物語…。この画廊に並ぶ25枚の写真は、時間にして3分20秒の多田の作った世界である。壮大なドラマにも匹敵するような真っ赤な太陽が、暗い空に沈んでいく短い時間。しかし、カメラを覗いている目には、半分沈んでいるとばかり思っていたのだが、黒い雲に覆われた太陽であったのだ。またもや顔を出す、まあるい太陽。暗くなっていく空に、片側が、半分にかけた太陽の彼方に、美しい富士山の姿。普通は山に沈んでいく太陽が富士山にぶつかりながら消えていくのだろうか。不思議な非日常な日没である。

テキスト:多田正美、塚本豊子

TADA Masami


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