島州一は、版と言う技法を用いて、あらゆる可能性を模索し続け一時代を築いた作家です。
双ギャラリーがオープンした1980年代の半ばは、島にとって絵画へと方向性を転換する時期でもありました。15年ほど前に長野県に居を移してから、島の絵画に対する感覚は更に研ぎ澄まされてきたように思われます。

1987年に双ギャラリーで行われた「アナログとデジタルの変換」展でトレースする行為に取り組み始めた島は、これまで様々なものをトレースし、版や絵画に起こしてきました。
Tracing- Shirtと名付けられたこの作品群は、島がかねてより作品として取り組んできたトレースする行為が、更に身体を意識した形に進化を遂げたと言えるでしょう。



Tracing- Shirt
浅間連山の景観は私の眼に見えるが、そこに生きる私の生活は刻々流れ行く時間としてしか見えない。
 その両者を総合する形は何か?が私の作品制作上の大前提であった。
 浅間山から立ち昇る噴煙は正に山が生きている証拠である。私が自分の日常着ているシャツを隈なくトレースすることで、自然の象徴である浅間と私が初めて出会うことが出来た。
 シャツの襟首が火口だとする比喩に始まり、山の稜線とシャツの肩口、両袖の左右への拡がりと共に正面の斜面と対峙する胸からの両ポケットの傾斜のわだかまり。
 中央を流れ落ちるボタンの列は、云わば火山の肌を刻する谷間のリズムと同調する。又、両袖の終わりまで辿る袖口の流れの泊りは、あたかも人々が住む村や町の佇まいを連想する。
 最後に広がる裾野は無限空間の中へシャツの裾としてはためき終わる。
 以上が私と浅間山との関係を具体化したトレース作品の構造である。
島州一